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術後の高リスク患者を予測するAIモデル

外科的手術は時に欠かせない医療行為だが、術後の合併症リスクは無視できな現実として存在する。COVID-19流行前には、全世界で年間約420万人が手術後30日以内に死亡していたとの推計もある。これは心疾患と脳卒中に次ぐ驚異的な高値である。米ピッツバーグ大学医療センター(UPMC)の研究チームは、電子カルテデータを活用し、術後の高リスク患者を事前に特定するAIモデルを開発した。

JAMA Network Openに公開されている同研究は、UPMC医療ネットワーク内の20に及ぶ医療機関で手術を受けた患者145万人以上を対象として実施された。うち125万人以上の手術患者データをもとにアルゴリズムのトレーニングを行い、その性能を20万人の手術患者で前向きに検証している。結果、開発されたAIモデルは、アメリカ外科学会(ACS)の既存モデルNSQUIPを上回る高い性能を持って、死亡リスクを高精度に予測することが明らかとなった。

本研究を主導したAman Mahajan氏は、「多忙な医療者にとって、術後高リスク患者の特定は簡単な作業ではなかった。従来、臨床医は多くのデータを統合し、追加の検査や臨床評価を頻繁に行う必要があった。我々は既存の電子カルテデータを利用できる使いやすいモデルの構築を目指した」と述べている

参照論文:

Development and Validation of a Machine Learning Model to Identify Patients Before Surgery at High Risk for Postoperative Adverse Events

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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