膝関節炎の発症は軟骨の摩耗による影響が大きい。この変化は、骨同士の間隙の変化としてX線画像上で観察可能であり、変化の度合いは疾患の重症度と密接に関係している。米国テキサス大学オースティン校の研究チームは、関節の間隙を高精度で自動測定するAI手法を開発し、変形性膝関節症の診断精度の向上や、発症リスク予測を可能とすることを目指している。
npj Digital Medicineに発表された同研究では、膝関節のX線画像データを基に、変形性膝関節症を臨床レベルの精度で自動診断するAIモデルを構築した。このモデルを大規模医療データベース「UKバイオバンク」に適用した結果、記録されている症例数に比べて2倍近く(178%)の膝関節炎を診断することができた。この背景として、従来の医療記録には「臨床医が軽症例を診断しないケース」、「患者ごとの痛みに対する耐性の違いから症状を無視あるいは軽視したケース」、「費用と回復期間を心配し手術療法を回避しようとしたケース」といった未報告の膝関節炎の存在が考えられている。
研究チームは、AIによる自動診断の導入が画像スクリーニングにおいて大きな助けとなることを期待している。研究を主導したVagheesh Narasimhan氏は、「クリニックでX線撮影を受けた患者に対し、全ての画像にバックグラウンドでこのようなAIシステムを稼働させ、関節炎の有無を自動診断させる状況を想像して欲しい。その結果、必要に応じて整形外科専門医の意見を仰ぐよう患者に提案することが可能になる」と語った。
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