Microsoftはヘルスケア領域への本格参入を始めているが、自然言語処理能力を備えたAIチャットボットへの取り組みが興味深い。プロジェクトの詳細は公式ウェブサイト上でも紹介されており、エンドユーザー向けのデモチャットボットを実際に試すことができる。現役の医師として英語版デモを利用した感想を述べてみたい。
まずは本チャットが診断・治療の方針決定に使えないこと、緊急性がある場合は救急車の要請を今すぐ行うことなどの注意書きから入る。「胸が痛い」と伝えると、年齢・性別の確認から、痛みの程度、持続時間、周期、発疹の有無、その他の症状、既往歴や海外渡航歴の確認、家族歴、喫煙歴など網羅的な聞き取りを受けた。ほとんどは項目を選択していくことで進み、最終的には救命科を受診すること、および可能性のある原因疾患を8つ提示してくれた。
いわゆる医師診察時の問診を体系的に漏れなく行っているといった印象で、教科書的な分、安定した結果が望めるように思う。鑑別疾患も妥当と思えるものが挙がっていた。利用体験自体はややくどいと感じるところもあるが、他症状に対しても同等の質が維持されるなら、例えば医療機関における予診などには現時点でも活用できる可能性がある。今後の機能強化、実用化にも注目する価値があるだろう。