MRIは放射線被曝のない一方、どのような断面でも自由に撮像できる”情報量の多い”医療画像検査のひとつである。全身の骨・関節から、脳実質・脳血管、腹部各臓器、眼窩や眼球内部に至るまで、非常に幅広い画像的評価を実現している。しかし、一般的なMRI検査は20分〜1時間程度と検査時間が長く、姿勢保持が困難な患者や小児にとっては大きな障壁となっていた。
2016年、米ニューヨーク大学はデータ取得の高速化によって省かれた画像データを、深層学習を利用して再構成を図る技術を初めて公開した。現在MRIの高速化技術は世界各地でAIを利用した研究がなされているが、その多くは、機械的に撮影プロセスを高速化しようとするのではなく、撮像範囲を適宜省略しAIで画像の再構築を行なうことで、検査時間を大幅に短縮しようとするものとなっている。AI in Healthcareが行なった、ニューヨーク大学で同プロジェクトを率いるDaniel Sodickson医師へのインタビューでは、現在はFacebook Artificial Intelligence Researchグループとの共同研究を進めており、研究手法や利用するアーキテクチャ、ベースとなるデータセットまでをオープンソース化する予定だという。
MRIの高速化は患者体験の改善と同時に、MRIの利用促進・撮像可能部位の拡大・画像の質向上に繋がる可能性が指摘されている。当該技術で先行するニューヨーク大学とFacebookによって、研究のオープンソース化が進めば、関連研究は世界的にも一層の加速をみせることになるだろう。