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精神疾患治療のアドヒアランス不良を検出するAIシステム

精神疾患治療において通院継続の失敗、服薬の自己中断などは増悪と再発の主要なリスクとして知られる。このようなアドヒアランス不良を早期に自動検出し、積極的なフォローアップを実現するAIシステムの有効性が検証された。

オーストラリア・アデレードに所在するフリンダース大学などの研究チームは、メディケアデータを利用し、精神疾患患者のアドヒアランスリスクをモニタリングするAIツールを開発している。Australian & New Zealand Journal of Psychiatryから公表された研究論文によると、同チームはAI2 (Actionable Intime Insights)と呼ばれるこのツールの臨床的有効性を、304名の精神疾患患者において検証した。結果、AIは142名(46.7%)にアドヒアランス不良のリスクがあるとしてフラグを立て、臨床医によるレビューを経て実際に31名に対して介入が行われた。また、フラグが立てられた患者は年齢が高く、過去の精神疾患治療エピソードが多いという傾向を持ち、高機能病院から一般開業医に移された患者においてより多くのアラートと実際の介入を受けていた。

著者らは「アドヒアランス不良のデジタルモニタリングは可能であり、地域のメンタルヘルスケアおよびプライマリケアの臨床ワークフローに統合できる」とした上で、このテクノロジーがケアプランへの非遵守行動を早期に検出し、疾患増悪や再発の予防に貢献する可能性が高い点を強調する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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