2022年予定の民間人宇宙飛行士4名によるISS(国際宇宙ステーション)滞在ミッション「Ax-1」に、イスラエル発のスタートアップ Healthy.ioの腎機能検査AIアプリが組み込まれることを先日紹介した(過去記事)。同ミッションに、イスラエル人のEytan Stibbe氏が宇宙飛行士として約5000万ドルの費用を自己負担して参加することが背景にある。Stibbe氏が宇宙で実施するイスラエル発の研究プロジェクトは、現在44種が計画されているという。
イスラエルのメディアJerusalem Postでは、参加プロジェクトのひとつであるSpring Vision社の網膜撮像技術「iCapture45」について報じている。iCapture45は、異なる波長のLED光を利用して撮像する「光干渉断層撮影(OCT: Optical Coherence Tomography)」の画像に独自アルゴリズムによる解釈を加え、網膜の小血管を自動マッピングすることができる。これを用いた実験が採用された背景には、微小重力環境が視力低下を招く「宇宙飛行関連神経眼症候群(SANS: Spaceflight-Associated Neuro-ocular Syndrome)」の存在がある。過去10年間で全宇宙飛行士の約3分の2がSANSを発症しているとされ、フライトからの帰還後に一部は回復するものの障害が残るケースもある。iCapture45の実験は、宇宙飛行士の目の構造変化を観察し、未解明の部分が残るSANSの発症原因解明などを目的としている。
iCapture45は地球上においても、全身の疾患予測や診断に役立つ可能性を秘めている。Spring Vision社の臨床研究責任者であるEyal Margalit教授は「一般的に重篤な全身疾患は、初期の段階で網膜血管に特徴が反映される傾向がある。そのため目の小血管をマッピングすることに大きな利点がある」と語り、心疾患・糖尿病・腎疾患・神経疾患の警告サインとして技術の応用を計画している。
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