網膜画像から眼科疾患を識別するAIが実用段階に入りつつあるなか、実世界での性能はまだ満足するものには至っていないという意見は根強い。豪モナッシュ大学などを中心とした国際研究グループによって開発された網膜画像用AIシステムを、実世界で大規模に検証した研究成果が学術誌 The Lancet Digital Healthに発表されている。
モナッシュ大学からのリリースでは同研究を紹介している。これは「CARE(Comprehensive AI Retinal Expert)」と呼ばれる、一般的な14種類の網膜異常を識別する深層学習システムを実環境で検証したというもの。CAREシステムは、アジア・アフリカ・北米・欧州における16の臨床現場から集められた207,228枚のカラー眼底写真によって学習された。このAIモデルを実際に中国全土35ヶ所の実臨床環境から前向きに収集された18,136枚の網膜画像で検証した。その結果、高次医療機関・地域病院・健診センターのいずれにおいても眼科医と同等の識別性能を示していた。さらに中国人以外のデータセットにおいても高水準の識別性能は維持されている。
研究グループは、中国全土の医療機関でCAREシステムの採用が進み、その後アジア太平洋地域における一般的システムとなることを期待している。著者のひとりでモナッシュ大学のZongyuan Ge氏は「システムの性能が眼科専門医と同等で、中国人以外でも性能を維持できることが分かった。より大規模な試験を実施する価値があるだろう」と述べている。
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