冠動脈異常を有する患者における将来的な心筋梗塞発症を予測するため、各種危険因子や臨床リスクスコアが用いられてきた。一方でそのリスク評価手法は個別最適化されておらず、精度の観点からも改善の余地があった。評価をより精緻なものとするため、高度な画像検査の採用が期待されており、昨今のAI関連技術でその予測精度を高める動きが盛んである。
学術誌 Journal of Nuclear Medicine(JNM)に発表された「将来的な心筋梗塞発症リスクを予測するPET/CTのAIモデル研究」では、2種の高度な画像診断技術によって予測精度を向上できることを示している。JNMの発行元であるSociety of Nuclear Medicine and Molecular Imaging(核医学・分子イメージング学会)の11日付プレスリリースでは、研究チームへのインタビューを行い、同研究を紹介している。本研究には、冠動脈のアテローム性動脈硬化症の診断が確定されている患者300名近くが参加した。PET検査による冠動脈の18-NaF取り込み量、および造影CTによる冠動脈プラークの定量的特徴をAIモデルで評価し、心筋梗塞発症リスクを予測した。結果として、画像情報を含まない臨床データのみでの予測性能(C統計量 0.64)に対して、プラークの定量的解析がこれを上回る性能を示した(C統計量 0.72)。さらに冠動脈の18-NaF取り込み量を含み、本研究で利用できるすべてのデータを組み合わせると、モデルの性能はさらに有意な向上を示していた(C統計量 0.85)。
研究チームのひとりで、米Cedars-Sinai Medical CenterのPiotr J. Slomka氏は「PETと冠動脈造影CTを組み合わせることで、精密医療を実現できる可能性が高まった。心筋梗塞の発症予測を確実にするため、画像と臨床データを統合するAI手法の応用を支持する結果が得られた」と語っている。
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