バーチャルリアリティ(VR)技術は、スマートフォンのゴーグルへの取りつけやヘッドマウントディスプレイの小型化・低価格化で身近となった。また、3Dディスプレイやプロジェクションマッピングの進化はゴーグル不要のVRを可能とした。それらの技術がVR医療として応用されている先進的な例を紹介する。
Healioによると、強い血管閉塞性疼痛を伴う小児の鎌状赤血球症患者に、VRによる没入感の強いリラックスできる映像体験をさせたところ、痛みスコアの改善が認められたという。米デューク大学の報告では、自力歩行のできない脊髄損傷患者にVRで自分の足が歩行している映像を見せ訓練したところ、歩行機能が回復したとのこと。また英NIHRの例では、自閉症スペクトラムの各種恐怖症に対して、Blue Roomというゴーグル不要のVR環境でシナリオによる克服プログラムを受けさせたところ、恐怖症への対処能力の向上を認めた。
紹介したVR医療の分類は、1.鎮痛と緩和ケア、2.身体機能回復、3.心理教育効果である。既存の標準治療を補完するVR治療は、治療による害が極めて少なく、導入へのハードルが低い。大規模試験が計画しにくい領域ではあるが、脳神経科学の解明に伴い積極的な応用が模索され続けている。