近年のAI技術の進展は、中国にとってさらなる経済成長のキーとなった。また、中国国内において根深い社会問題であり続ける「教育や医療における資源の不平等」さえ、根本的に解決するだけの潜在能力がAIにはあるとみる。
マレーシアの最大手英字新聞The Star電子版が報じたところでは、中国は2025年までに製造・医療・教育・農業・国防におけるAIの大規模導入を目論み、2030年までに米国を差し置いて「AIに関するグローバルリーダー」の地位を確立することを目指しているという。現に中国の膨大な人口と政府が後押しする巨大な利用可能データベース群を背景として、例えば顔認識技術に特化したSenseTimeやMegviiなど、世界有数のAIスタートアップが北京から次々と生まれている。
医療における社会問題解決を目指したAI導入は、公共監視AIほど世界的に大きな話題となることは少ない。しかし、中国全人口の約40%が依然として比較的貧しい農村部に住み、国家資産の3分の1を上位1%の富裕層が保有する強烈な格差社会にあっては、医療の地域間格差もまた現実として途方もないものになっている。オンライン医療サービスプロバイダーのPing An Good Doctorをはじめ、多くの野心的なAIスタートアップが直向きにこの問題に取り組んでいる。もし中国がAIユートピアを実現するのであれば、それは精巧な国家戦略と個々の圧倒的な問題意識によるところが大きいだろう。