AIユートピアを夢見る中国

近年のAI技術の進展は、中国にとってさらなる経済成長のキーとなった。また、中国国内において根深い社会問題であり続ける「教育や医療における資源の不平等」さえ、根本的に解決するだけの潜在能力がAIにはあるとみる。

マレーシアの最大手英字新聞The Star電子版が報じたところでは、中国は2025年までに製造・医療・教育・農業・国防におけるAIの大規模導入を目論み、2030年までに米国を差し置いて「AIに関するグローバルリーダー」の地位を確立することを目指しているという。現に中国の膨大な人口と政府が後押しする巨大な利用可能データベース群を背景として、例えば顔認識技術に特化したSenseTimeやMegviiなど、世界有数のAIスタートアップが北京から次々と生まれている。

医療における社会問題解決を目指したAI導入は、公共監視AIほど世界的に大きな話題となることは少ない。しかし、中国全人口の約40%が依然として比較的貧しい農村部に住み、国家資産の3分の1を上位1%の富裕層が保有する強烈な格差社会にあっては、医療の地域間格差もまた現実として途方もないものになっている。オンライン医療サービスプロバイダーのPing An Good Doctorをはじめ、多くの野心的なAIスタートアップが直向きにこの問題に取り組んでいる。もし中国がAIユートピアを実現するのであれば、それは精巧な国家戦略と個々の圧倒的な問題意識によるところが大きいだろう。

TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事