医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例精神・神経疾患の既存薬再開発「ドラッグリポジショニング」を行うAI手法研究

精神・神経疾患の既存薬再開発「ドラッグリポジショニング」を行うAI手法研究

新規医薬品開発に必要とする膨大な時間と費用の圧縮のため、既存薬を再開発する「ドラッグリポジショニング(drug repositioning)」への注目が続く。精神・神経疾患でのドラッグリポジショニングを効果的に検索・絞り込みを行うため、ネットワーク医学という機械学習アプローチを用いた研究が学術誌 Translational Psychiatryに発表されている。

同研究では、ブラジルのサンパウロ研究財団の研究者らがIBM Watson for Drug Discovery(WDD)と独自開発のプログラムを用い、過去50年における数百万件におよぶ科学論文のマイニングを行い、疾患と遺伝子と薬剤に関する知識をつなぐネットワークを構築した。ネットワークの中から再発見された精神・神経疾患の重要な遺伝子を標的とする薬剤は、その疾患治療のために用いられたことは一度もなかった。近日中に研究グループは新規リストアップされた薬剤の統合失調症に対する検証研究を予定しているという。

また、ドラッグリポジショニングはCOVID-19に対する治療薬探索としても脚光を浴びている。同研究グループが開発した候補薬物のAIスクリーニング手法は、様々な感染症治療薬に対しても応用可能とされる。ネットワーク医学は現在の危機的状況において研究分野から焦点を絞り込むためにさらなる貢献ができるだろうか。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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