米主要病院の90%がAIソリューションを採用

Sage Growth Partnersによる新しい調査結果では、2020年段階において9割もの調査対象医療機関(年間売上8億ドルを超える主要病院)が、「何らかのAIによる自動化戦略を採用している」ことを明らかにした。2019年の調査結果による53%からは急激な増加を認めており、新型コロナウイルス感染症の拡大に伴う「AIと自動化への戦略的イニシアチブ」が重要性を高めたことも一因として考えられている。

Sage Growth Partnersがこのほど明らかにした調査結果では、医療AIテクノロジーの認識・採用・実装がこの1年間にどれほど急速に普及したかが示されている。特に興味深いことは、医療AIは単なる「興味本位」や「将来性への期待」といったフェーズを抜け、医療機関運営での実際的なコスト削減効果も主要な導入理由として取り上げられていることだ。調査対象医療機関における経営幹部の、実に76%が「無駄な支出を削減するため」にAIによる自動化を重視する点を明らかにしている。また、同時に多くの医療機関が医療AI導入に伴う投資利益率を確認できており、数字としての実態が伴う事実もある。

一方で、「臨床ワークフローの中で完全に機能しているAIソリューションは7%にとどまる」こと、「ユースケースが非常に限られている」こと、「実装と運用をサポートする人的リソースが不足する」ことなどが現在の問題点として挙げられている。医療AIが医療提供体制にとって不可欠のインフラストラクチャとなるのは、もはや未来のことではない。他方で、臨床的有効性が担保されることは前提として、既存のワークフローに速やかに統合され、ユーザーフレンドリーなAIシステムが求められているとともに、医療AIに習熟した専門スタッフの育成と確保もヘルスケアプロバイダー側の喫緊の課題となっている現状が浮き彫りにされた。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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