医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例疾患診断へのAI活用事例皮膚科医全員の診断精度を上回る「メラノーマ識別AI」

皮膚科医全員の診断精度を上回る「メラノーマ識別AI」

皮膚科領域の最重要疾患のひとつである悪性黒色腫(メラノーマ)は、メラニン色素を作るメラノサイトが癌化して発生する皮膚がんで、その高い死亡率が問題となる。早期発見と切除が治療成功の鍵となる一方、良性の色素性母斑(ほくろ)との区別は容易ではない。

ベトナム・ハノイ工科大学の研究チームは、1.7万枚を超えるメラノーマおよび母斑の画像群をトレーニングデータセットとし、ダーモスコピー画像からメラノーマを識別する強力な深層学習モデルを構築した。研究成果はこのほど、Scientific Reports誌から公開されている。チームの研究論文では、適切なCNNアーキテクチャと最適化されたアルゴリズムによって、不均衡データ (Imbalanced data) における高精度メラノーマ識別手法を提案している。構築されたモデルは、ドイツ国内12の大学病院に勤務する157名の皮膚科医と比較されており、提唱モデルはAUC 0.944、感度85.0%、特異度95.0%を達成し、研究参加した皮膚科医全員の診断精度を上回っていた。

一瞥診断(スナップ・ダイアグノーシス)が基本となる皮膚科領域は、元来画像解析AIとの親和性が高い。特に一般内科外来など、皮膚科を専門としない医師にとって「ほくろの良悪性判断」は極めて難しく、ダーモスコピーの解釈も困難であるため、このような診断補助AIの臨床導入は医療の質的向上に資する可能性が高い。研究チームは、今後の研究促進と再現性確保のため、全てのソースコードを含む研究データを公開している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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