「トランスサイレチン型(ATTR-)心アミロイドーシス」という希少で難治性の心疾患は、加齢や遺伝子変異によるタンパク質の変性でアミロイドが心臓に沈着し、致死的な心不全や不整脈を起こす。ビンダケル(タファミジスメグルミン)のようなアミロイド沈着を抑制する治療薬が近年普及し、治療方針が他の一般的な心不全と区別されることから、ATTR-心アミロイドーシスを早期に鑑別診断する重要性が増している。
ノースウェスタン大学フェインバーグ医学院からのリリースでは、同大学のチームを中心とした「機械学習モデルによるATTR-心アミロイドーシスの高リスク患者を特定する研究」が紹介されている。希少疾患であるATTR-心アミロイドーシスは、実際の有病率よりも潜在的に過小評価されているという仮説のもと、電子カルテデータから患者をスクリーニングする機械学習モデルが開発された。この研究がユニークなのは、心エコー結果や臨床文書からのスクリーニングではなく、「医療費請求における臨床診断コードの組み合わせからATTR-心アミロイドーシスの罹患リスクが高い患者を推定する」という点にある。例えば、心不全患者が脊椎・関節・腱に問題を抱えている場合、ATTR-心アミロイドーシスが存在するヒントとなる。最も強い関連性を示した診断コードは「心嚢液貯留」と「心房粗動」で、心臓以外の因子としては「手根管や各関節の炎症」が含まれていた。
本研究の成果は Nature Communications誌に発表されており、現在はノースウェスタン大学の心不全患者を対象に、前向きでの精度評価が行われている。同大学循環器内科教授で著者のSanjiv Shah氏は「レセプトデータを用いていることから、このモデルは全国の病院で一般化が可能で、他の希少疾患にも適用できる」と述べている。最終的な目標としてはモデルを電子カルテに直接統合し、ATTR-心アミロイドーシスの高リスク患者に追加スクリーニング検査が行われるようにしていきたいという。
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