データアグリゲーションプラットフォームの価値

米オハイオ州デイトンに本拠を置くヘルスケアプロバイダーの「Dayton Children’s Health Partners(DCHP)」は、10の独立した小児科診療所を有し、プライマリケアと小児科専門医療の実践に努めてきた。一方、これら医療機関群においては異なる6つの電子医療記録(EMR)を利用しており、データベース間の隔絶が有効なデータ利用の妨げとなってきた。

DCHPはこのほど、効率化と患者アウトカム向上を目的とした「データアグリゲーションプラットフォームの構築」を目指し、Innovaccer社と提携したことを明らかにした。同社のクラウドプラットフォームを利用し、統合された患者記録を生成することで情報サイロの排除を実現している。今後、ネットワーク内で患者情報は完全に共有され、円滑で効果的な医療提供に繋げるほか、データ標準化による適切な財務分析の実現と運営効率化、人的パフォーマンスの測定と向上など多面的なデータ活用を模索する。

医療機関ごとにデータが孤立する現状は日本においても深刻である。個人健康記録(PHR)への議論も含め、強力な推進力を持った民間プレイヤーの参入にも期待が大きい。有効な医療AI構築の観点からも多地域多施設データの価値は高く、実際的なデータ利用を見据えた包括的プラットフォームの確立と導入が事態解決の一助となり得る。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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