前立腺がんは、骨に転移しやすいがん種のひとつで、最初の診断時から既に骨転移を来して発見される症例が後を絶たない。総体として予後が良好ながん種でありながら、転移症例のうち2割弱を占める骨転移患者では5年生存率が著しく低下し、疼痛や病的骨折によって生活の質が大きく損なわれる。それら臨床的背景から、骨転移は前立腺がんで重要な意味を持ち、そのリスクを高精度に予測することが、昨今のAI/機械学習領域に求められている。
中国・南昌大学の研究チームは、「前立腺がんの骨転移を予測する機械学習モデル」を開発し、Cancer Management and Research誌に成果を発表した。本研究では、米国国立がん研究所(NCI)のデータベース・Surveillance Epidemiology and End Results(SEER)から前立腺がん患者20万人以上を抽出し、代表的な6種の機械学習アルゴリズムで予測モデルを構築した。南昌大学第一附属医院の前立腺がん患者644名で各モデルは外部検証され、「XGB: eXtreme gradient boosting」が最も高い予測性能(AUC: 0.962、感度: 0.906、特異度: 0.879)を達成した。検証からは骨転移の主要な危険因子として、グリソンスコア・PSA値・T期・N期・年齢、が挙げられている。
前立腺がん骨転移を検出するスキャン検査は、疼痛など「骨関連の有害事象(SRE: skeletal-related events)」が起きた後に提案されるケースも実際の現場では珍しくない。どのような患者が積極的に骨スキャンを受けるべきか、そして、転移から症状出現まで数ヶ月という典型的なサイクルにどのように早期介入できるか、リスク判断の予測ツールは検査機会の適正化における拠り所となり得る。研究チームは機械学習モデルに基づき、医師や患者が容易に操作できるWebベースの予測ツールを開発することを目標にしている。
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