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アイルランド – 1000万ユーロのALS研究を立ち上げ

筋萎縮性側索硬化症(ALS)は、運動神経細胞が選択的に障害される神経難病で、進行性に筋力が低下し、歩行困難や構音障害、呼吸不全に至る重要疾患だが、未だ根本的治療法は得られていない。アイルランドのLeo Varadkar副首相(自身は政治家であり医師でもある)はこのほど、ALSの疾病理解に大きな洞察をもたらし得る新しい研究計画について、1000万ユーロ(約12.8億円)の投資をもってスタートすることを明らかにした。

Science Foundation Ireland(SFI)が1日公表したところによると、アイルランド政府が運営する同財団から500万ユーロ、産業界のパートナーから500万ユーロの計1000万ユーロを助成する大規模研究計画となる。「Precision ALS」と名付けられた同計画は、SFIに属する2つの研究センターが主導し、臨床医学・データサイエンス・AIのトップクラス研究者らが参画するとしている。欧州全域のALS臨床研究に対して、革新的でインタラクティブなプラットフォームを提供するとともに、AIを活用した多面的なデータ分析を予定する。精密医療を見据えた世界最大級のマルチモーダルデータセットを構築するため、複数の国際拠点でタイムリーかつコスト効率の高い方法でデータを大規模に収集する手法も併せて開発するとのこと。

Varadkar氏は「このプロジェクトでは、臨床研究と産業界にまたがり、我々の最高の技術、最高のアイデア、そして最高の医療専門知識を結集することで、人々の生活をより良く変える可能性を持つ。精密医療を見据えた臨床試験の促進ツールを開発するが、これは他の希少疾患にも利益をもたらす可能性があり、雇用創出や薬剤費削減までを支援するものとなる」と述べている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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