我々が「生命」と呼ぶものは、現在地球上に存在するものに限られる。一方で、宇宙生物学に基づき、地球外生命を含む「生命の起源」を探るには、単なる化学的な分子パターンを超えた、より広範に適用可能な特徴理解・予測アルゴリズムが必要となる。NASAの資金提供により、米アリゾナ州立大学などの研究チームは「酵素のスケーリング則」からこれを実現しようとしている。
米国科学アカデミー紀要(PNAS)に掲載されたチームの研究論文によると、研究チームはIntegrated Microbial Genomes and Microbiomesデータベースを用い、バクテリアや古細菌、真核生物に存在する酵素を調べ、新しい種類の生化学的普遍性を明らかにしたとしている。酵素は、水分子を用いて化学結合を切断するもの(ヒドロラーゼ)から、分子構造を組み替えるもの(イソメラーゼ)、大きな分子を結合するもの(リガーゼ)まで、その機能によって分類することができる。研究チームは、これらの機能分類に属する酵素の量が、「生物全体の酵素量に関連してどのように変化するか」を比較した。その結果、異なる酵素クラスの酵素数と生物のゲノムサイズとの間に、アルゴリズムに近い関係となる様々なスケーリング則が存在することが判明した。さらに、これらの法則は、酵素群の中の特定の酵素には依存しないことも併せて明らかにしている。
アリゾナ州立大学の公表によると、サンタフェ研究所のSara Imari Walker氏は「我々は人類が知らない生命の特徴を特定し、さらに予測するための新しいツールを求めてきた」とし、あらゆる生化学的システムに適用されるべき普遍的な法則を明らかにすることを目指してきたという。これには、生命の起源に関する定量的な理論開発や、他の惑星での生命探査の指針となる理論も含まれる。今回の成果はこれらの目的達成に大きく近づくもので、生物科学コミュニティから大きな関心を集めるとともに、追試験による多面的な評価が進むことが期待されている。
関連記事: