小児救急を迅速化する機械学習ベースの自律検査指示

救急診療部での待機時間および滞在時間の長さは、予後不良との関連が指摘されている。カナダ・トロントのHospital for Sick Childrenにおいて、小児救急外来における機械学習ベースの医療指示システム導入によって、検査オーダーを自動化し「診療の迅速化が達成できるか」についての検証が進められている。

JAMA Network Openに掲載された同研究は、Hospital for Sick Childrenの救急診療部を受診した77,219例の小児患者を対象としている。研究チームは機械学習ベースで自律的に医療指示を発するシステムを構築するため、尿検査・心電図・腹部超音波検査・ビリルビン値検査・前腕部X線検査の必要性を予測するモデルを、電子カルテデータに基づいてトレーニングした。性能検証の結果、22.3%の患者で診療が効率化され、自律化された検査オーダーによって患者1人あたり、通常より165分早く検査結果を得られることが示された。

特に北米においては、救急外来で患者の流れを改善する戦略として、トリアージ担当の看護師による検査指示が重視されてきた。これは成人において比較的有効な戦略であったものの、小児では「過剰検査または侵襲的検査がより懸念される」こともあり、ワークフロー普及を阻む要因ともなってきた。機械学習ベースの自律診療指示システムの開発が進むことで、従来の人によるアプローチの限界を克服する可能性があると、研究チームは考察している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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