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BIONIK社 – ロボットリハビリテーションデバイス「InMotion」

脳卒中は全世界で年間1500万人以上が発症し、生存者の約30%には何らかの恒久的な障害が残る。米BIONIK社は、脳卒中患者に対しクラウド接続のロボットシステムで評価・治療を行い、同領域におけるリハビリテーションの変革を目指している。

同社のロボットリハビリテーションデバイス「InMotionシリーズ」は、これまでに全世界で280台以上が導入されたという。システムは上肢の運動制限からの回復を主な目的とした、ロボット支援による治療タスクを行い、リハビリの進捗と機能回復を評価する。脳卒中後の神経学的な機能回復には、神経の可塑性を考慮した反復運動が有効とされ、その達成には「各動作で1万回以上の反復運動」が目標となる。膨大な作業量に対する回答のひとつとして、ロボットリハビリテーションが生まれた。従来の理学療法では1時間当たり35〜60回の反復運動を行っていた部位において、InMotionシステムでは1時間当たり数百回の反復を可能にする。

同社が公開した「InMotionの臨床効果」は、14日間に3回以上リハビリセッションを受けた患者は、2回の患者に比べ、全ての評価指標が8%以上改善したという。特に改善効果が大きい項目としては、腕の動作の滑らかさの指標「Smoothness」で、改善度は15.1%向上した。また、目標間の直線距離と、実際の患者の動作距離を比べた「Movement Efficiency(動作効率)」は17%向上していた。さらに、目標間の動作における「Mean Velocity(平均速度)」は19.7%向上したという。

BIONIK社は、「クラウド接続でロボットから収集される臨床データこそが、製品の中核である」としており、AI機能を通じた患者中心のソフトウェアサービスに対して、収集データに基づく改良を継続している。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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