医療AIの恩恵を患者が平等に受けるためには、臨床医自らがAI技術に精通する必要がある。臨床医の理解が不十分なままでAI導入が進んだ場合、臨床判断に十分な時間を確保できない切迫した場面や、難解で確証の持てないケースなどにおいて、AIの提案を無批判に受け入れてしまう「自動化バイアス(automation bias)」が生じやすくなる。英Health Education England(HEE)と、NHS AI Labが今月発表した新しいレポート「Understanding healthcare workers’ confidence in AI」では、最前線の医療スタッフが自信を持ってAIを利用できるようにするため、個別化された専門的サポートの必要性が説かれている。
Health Education Englandによると、本報告書では「臨床医自身の直感・見解と、AIシステムが提供・推奨する情報との間に生じ得る『意見の対立』に対処できるよう、トレーニングや教育を通じてサポートすること」をこれからの組織運営に求めている。医療・介護の現場でAIを導入するには、「従業員のテクノロジーとの付き合い方を変革していくことが必要」とする。
本年の後期に発表される予定の第2次報告書では、あらゆるレベルのヘルスケア労働者が自信を持ってAIを評価し使用するために必要な「教育プログラム」と「教材」を具体的にするという。NHS AI LabのAI研究・倫理責任者であるBrhmie Balaram氏は「我々NHSの責任は臨床医のスキルアップだけではない。革新的技術を採用するスタッフをサポートする文化を醸成し、適切な規制を整備することで、これらのシステムを信頼できるようにし、全ての医療スタッフに安心感を与えたい」と述べている。
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