雇用主が、新入社員の選考や業績モニタリング、給与・昇進の決定にAIソフトウェアツールを用いる機会が増えた。しかし、これらツールには「障害者の雇用に不当な差別をもたらす可能性」も指摘されている。米司法省および雇用機会均等委員会(EEOC: Equal Employment Opportunity Commission)は、「AIツールによる障害者の雇用差別を警告し技術的支援を行う文書」を公表した。
司法省のガイダンス文書「Algorithms, Artificial Intelligence, and Disability Discrimination in Hiring」は、AIツール使用下での雇用の権利と責任に関してできるだけ平易な記載で解説し、法律や技術に専門的背景を持たない人でも容易にアクセス・理解できるものとなっている。その具体的事項には、1.雇用主は「使用しているツールの種類」を示すこと、2.ツールを設計または選択する際、様々な障害にどのような影響を与え得るか考慮すること、3.ADA(障害を持つアメリカ人法)に基づく雇用主の義務履行、4.従業員が差別を受けたと感じた場合への対策、などが記載されている。
またEEOCのガイダンス文書「The Americans with Disabilities Act and the Use of Software, Algorithms, and Artificial Intelligence to Assess Job Applicants and Employees」では、3つの主要な懸念事項として、1.雇用主はアルゴリズムベースの意思決定ツールを使用する際、合理的配慮を提供するプロセスが欠落していること、2.適切な保護措置が行われなければ障害者が仕事や昇進の検討対象から除外される可能性があること、3.AIツールの使用に際し、疾病・障害情報を提供しなければならない場合、アクセスが禁じられている診断結果や障害関連情報へのリーチにつながる可能性があること、が取り上げられている。
司法省のKristen Clarke検事総長補佐官は「AIツールは、仕事を求める障害者の障壁となってはならない。これらガイダンス文書は、雇用主がツールを使用する際にADA(障害を持つアメリカ人法)にどのように違反する可能性があるかを理解させるものである」と述べた。
関連記事: