米マサチューセッツ大学で老年医学講座を率いるGurwitz氏は、老年医学が衰退の一途をたどっている事実を危惧している。JAMA誌に掲載された論文では、老年医学専門医の数が2000年の10,270人から7,400人と、この20年間で3割も減少している事実を指摘する。
一方で、この20年間において米国の65歳以上人口は60%以上増加している。本来、老年医学専門医が担当する患者数は700人以下であることが望ましいとされるが、現在は専門医1人あたり10,000人を超える高齢患者の対応が必要となる。Gurwitz氏は「早急に対策を講じない限り、医療従事者は将来、高齢患者のニーズに応えるだけの能力(規模と能力の両面において)を欠くことになるだろう」としており、米国老年医学会も、虚弱で医学的に複雑な高齢者ケアには、2030年までに3万人の老年医が必要になると指摘する。
メディケアの診療報酬が低いこと、他専門医と比較して収入が低いこと、名声が乏しいこと、治療難易度の高さ、対象患者・疾患の魅力の程度、などが医師確保の壁として挙げられる。早急な制度改革によって確保することが困難とされる専門リソースにおいて、AIを始めとする新技術が果たす役割に大きな期待があることも事実だ。急速に拡大する老年医療市場は、革新的なソリューションの登場を待ち望んでいる。
参照論文:
The Paradoxical Decline of Geriatric Medicine as a Profession
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