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英NHS – 医療者のAI利用をサポートする新報告書

医療AIの恩恵を患者が平等に受けるためには、臨床医自らがAI技術に精通する必要がある。臨床医の理解が不十分なままでAI導入が進んだ場合、臨床判断に十分な時間を確保できない切迫した場面や、難解で確証の持てないケースなどにおいて、AIの提案を無批判に受け入れてしまう「自動化バイアス(automation bias)」が生じやすくなる。英Health Education England(HEE)と、NHS AI Labが今月発表した新しいレポート「Understanding healthcare workers’ confidence in AI」では、最前線の医療スタッフが自信を持ってAIを利用できるようにするため、個別化された専門的サポートの必要性が説かれている。

Health Education Englandによると、本報告書では「臨床医自身の直感・見解と、AIシステムが提供・推奨する情報との間に生じ得る『意見の対立』に対処できるよう、トレーニングや教育を通じてサポートすること」をこれからの組織運営に求めている。医療・介護の現場でAIを導入するには、「従業員のテクノロジーとの付き合い方を変革していくことが必要」とする。

本年の後期に発表される予定の第2次報告書では、あらゆるレベルのヘルスケア労働者が自信を持ってAIを評価し使用するために必要な「教育プログラム」と「教材」を具体的にするという。NHS AI LabのAI研究・倫理責任者であるBrhmie Balaram氏は「我々NHSの責任は臨床医のスキルアップだけではない。革新的技術を採用するスタッフをサポートする文化を醸成し、適切な規制を整備することで、これらのシステムを信頼できるようにし、全ての医療スタッフに安心感を与えたい」と述べている。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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