連続尿量と腹腔内圧から急性腎障害を予測

大動脈解離や腹部大動脈瘤などの手術後、腹腔内圧が上昇して循環障害を含めた多臓器障害を引き起こす「腹部コンパートメント症候群(ACS: abdominal compartment syndrome)」という重篤な合併症がある。腹腔内圧上昇の検知には、尿道カテーテル留置で膀胱内圧を測定し、腹腔内圧を間接的に測定する手法が使われている。米Potrero Medical社は、尿道カテーテルに次世代型センサーを搭載し、尿量・腹腔内圧・深部体温のリアルタイム測定で「腹腔内圧上昇と続発する合併症」を予測する診断システム「Accuryn Monitoring System」を開発している。

Potrero Medicalは、Accurynシステムにおける「心臓手術後の集中治療患者における、腹腔内圧上昇からの急性腎障害(AKI)予測アルゴリズム」が米食品医薬品局(FDA)のBreakthrough Device指定を受けたことを公表した。同システムは、特許取得済みの「カテーテル管内における能動的なクリアランス技術」で尿の滞留と逆流を防ぎ、測定誤差を減少させることができる。また、ボタンワンプッシュでカテーテル先端のセンサーが腹腔内圧を測定する。これらのデバイス技術をAKI予測アルゴリズムと組み合わせることで、有効な臨床意思決定を支援しようとするもの。

Potrero Medical社CEOのJoe Urban氏は「連続尿量と腹腔内圧の測定は、Accurynシステムの登場まで、重点的なデータとして活用が進んでいなかった患者パラメータである。FDAからのBreakthrough Device指定は喜ばしく、患者・医療者・医療システムにもたらす将来性に大きく期待している」と語った。

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