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プライマリーケアでAIを活用するために

プライマリーヘルスケアにおけるAIツールの効果的な展開を実現するには、ツール開発とその検証に実務家が参加し、AIツールの機能と臨床ニーズを一致させることが必要となる。カナダ・オンタリオ州に所在するウェスタン大学の研究チームは、プライマリーヘルスケアにおけるAIツール開発の体制構築に向けた第一歩として、実務家や意思決定者の見解を理解するための質的研究を行い、その成果を公表した。

BMC Medical Informatics and Decision Makingに掲載された研究論文によると、チームは、オンタリオ州のプライマリーヘルスケアおよびデジタルヘルス関係者に対する14回の詳細なインタビューを実施し、NVivo(QSR International社が提供する質的研究支援ソフトウェア)を用いたコーディングおよび分析を行っている。結果では、プライマリーヘルスケアでのAI推進に対する複数の問題点が特定されており、これには、1. 想定される用途と実臨床のミスマッチ、2. 臨床スキルや能力、ミス、コントロールの喪失など、AIがもたらす可能性のある「脅威」に対する基本的な懸念、3. 導入影響を考慮したAI採用への慎重姿勢、などが挙げられている。

著者らは「プライマリーヘルスケアにおけるAIの利用は、ポジティブな影響を与える可能性があるが、その実施に関しては多くの要因を考慮する必要がある」とした上で、多分野参画によるAIの共同構築や質の高いデータ収集と利用、評価手法の確立などを必要な要素として指摘する。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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