AI in Health and Care Awards

英国政府は2023年、首相による年頭演説の中で5つの優先事項を打ち出しているが、その1つは「英国民保健サービス(NHS) における患者待機リストの削減」であった。ここでは、英国が強みを持つ分野の1つとしてAIを挙げ、研究開発に対する公的資金投入を強化することにも言及している。

英国保健省では、有望なヘルスケア関連AI技術9種に、約1600万ポンド(26億円)に及ぶ政府資金の提供を発表している。NHSに価値あるAI技術導入を進めるため、「AI in Health and Care Awards」と呼ばれるプログラムを設定しており、第3ラウンドまでに資金を獲得したのは下記9つの組織・企業となる。

University Hospitals Coventry and Warwickshire
NHSの主要な10の研究室をデジタル化し、細胞画像関連のハブを形成するプロジェクト。

Royal United Hospitals Bath
肺動脈塞栓や高血圧の診断改善用AI。

Mendelian
電子カルテデータから希少疾患の診断基準に照合するAI技術。

Oxford Cancer Biomarkers
大腸がんの個別化治療に向けた、スクリーニング用遺伝子バイオマーカー特定のためのAI技術。

Icometrix
脳損傷、てんかん、脳卒中、認知症、アルツハイマー病の治療モニタリング支援AI。

Cibiltech
腎移植の転帰を予測するAI。

Tommy’s National Centre for Maternity Improvement
早産・死産につながる合併症リスクを早期発見するオンライン医療AIツール。

Medtronic
大腸内視鏡画像処理AI「GI Genius」。

Ibex Medical Analytics
病理画像解析AI。

NHSで本プログラムを担当するDominic Cushnan氏は「NHSの患者待機時間短縮は、政府の優先事項トップ5のひとつで、記録的な資金援助に支えられている。AIアワードが支援する技術革新は、診断・治療をスピードアップし、NHSスタッフの時間確保に貢献する」と語った。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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