下顎には、神経と血管が走行する重要な解剖学的構造である「下顎管」がある。例えばインプラント治療では、神経損傷を避けるため、下顎管から2mm以上の安全マージンが推奨されるなど、その位置把握は歯科治療で重要な意味を持つ。歯科用コーンビームCT(CBCT)から下顎管の位置を把握する際には、個人差や人種的差異のために手動では難しい場合もあるなど、より正確で自動化された手法の開発が求められている。
フィンランドのアールト大学などによる多施設共同研究では、下顎管の位置を特定するAIモデルの評価を行っており、その研究成果はScientific Reportsに発表されている。「モデルの生成した下顎管の位置」に関する臨床評価として専門家によるレビューを受けたところ、96%で臨床的に十分使用可能、という高い評価がなされたとする。
著者でアールト大学のJaakko Sahlsten氏は「AIモデルの学習で課題となったのは、3D画像に写る下顎管の大きさが画像全体のデータに比べ非常に小さいという、トレーニング素材のアンバランスさだった。臨床評価を受け、我々はこのモデルがうまく機能していると強く確信している」と語った。
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