柔軟な動きが可能な手術ロボットは、複雑な体内経路での低侵襲手術を実現する技術として期待されている。しかし、実際の医療現場では、センサーやアクチュエーターの故障、通信遅延、外乱などが同時に発生し、安全性や精度が低下する課題がある。これに対し、イタリアとフランスの国際研究チームは、深層学習(DNN)を用いてこれらの障害に指定した速度で対応する最適制御フレームワークを開発した。本研究はEuropean Journal of Controlに掲載されている。
これまでの制御モデルは、遅延や故障などの問題を個別に処理する理想的な条件下での設計が主流であった。今回提案された手法は、入力および出力の遅延、アクチュエーターの飽和、センサーとアクチュエーターの同時故障、そして、最適に近い性能を維持したまま指定時間に収束させるという4つの主要な課題を統合的に解決するものである。システムには、障害や遅延を同時に推定するモデルベースの推定器と、追従誤差を学習して最適な制御をオンラインで近似するDNNが組み込まれている。腱駆動型の連続体ロボットを用いたシミュレーションでは、既存の制御方法と比較して約17倍速い0.3秒での収束を達成し、制御にかかる負荷も大幅に削減できることが実証された。
本研究の特筆すべき点は、AIが持つ予測不能性に起因するリスクを数学的に抑え込むことに成功していることにある。これは、制御工学の分野が培ってきた安定性理論の発展がもたらした恩恵であり、医療のようにリスク管理が重要となる分野において、AIを導入する際の一つの大きな指針となることが期待される。
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