心肺停止(Cardiopulmonary arrest: CPA)の緊急通報で、バイスタンダー(bystander)と呼ばれる救急現場に居合わせた発見者・同伴者は、心肺停止の様子を落ち着いて正しくオペレーターに伝えられるだろうか。また、蘇生処置は速やかに開始されるだろうか。
世界経済フォーラム: The World Economic Forumの記事によると、デンマークのCorti社は、コペンハーゲンの公式緊急通話『112』で心肺停止判定AIを試験運用している。通話音声での病状に関する単語や特徴から、心肺停止の有無を識別するニューラルネットワークを構築した。オペレーター単独73%に比べ、AIのサポートにより90%以上の正確さで心肺停止を認識できたという。同システムは欧州の4つの都市に試験範囲を拡大する。
AIが通話の早期に心肺停止を検知すれば、一刻も早い蘇生処置をバイスタンダーに指示できる。システムの誤検知によるリスクに対しては、蘇生処置を躊躇するデメリットが上回ると考えるのが一般的だ。蘇生処置なしで経過した心肺停止は、社会復帰率が1分毎に7-10%程度、急速に低下するといわれる。欧州や米国と比較し社会復帰率の低さが課題とされる日本でも、公的インフラへのAI応用の参考例となるだろう。