過去10年間において、認知症患者およびその介護者を支援するためのIT活用事例が急増した。なかでもチャットボットはその手軽さと親しみやすさなどから、ユーザーからの人気が高い。ただし一方で、認知症支援を巡るチャットボットテクノロジーが実際にどのように役立つのかについて、詳細に検討した研究は限られている。
カリフォルニア大学リバーサイド校などの研究チームは、認知症支援チャットボットの種類を特定し、機能とコンテンツの観点からその品質を評価する研究を行った。成果はJournal of Medical Internet Researchからこのほど、オープンアクセス論文として公開されている。研究チームは、Google Playストア、Apple App Store、Alexa Skills、およびインターネットでの体系的な検索によって、505の認知症支援チャットボットを特定した。そのうちの6つが基準に適合し、仔細なレビューに進んでいる。特定されたチャットボット群は認知症教育と記憶力トレーニングに偏っており、介護のスキルや活動に寄り添うものはみられなかった。また、全てのアプリが利用開始に一定のITスキルが必要となり、PCやインターネットへの習熟が無い人、または認証患者において見過ごせないハードルとなっている点も指摘している。
著者らは「全体として非常にうまく機能している」点を強調した上で、上記に加えて倫理・プライバシーの懸念にも言及する。現に、十分な倫理的配慮とプライバシー保護基準を満たしたのは2つのアプリのみで、他には種々の限界が内包され、速やかな改善を行う必要があるとする。現在不足し、今後重点的に開発を進めるべき認知症支援チャットボットとして、1. 確たるエビデンスに基づき情報・アドバイスを提供するもの、2. 心理的サポートを効果的に提供するもの を挙げており、介護者の負担軽減および認知症患者の自律的ケアに資する研究開発を推奨している。
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