医師は患者1人あたりの診療時間の62%をカルテレビューに費やしており、最も時間を要するステップは臨床データの確認であるという。スタンフォード大学の研究チームは、このレビュープロセスを効率化するため、患者情報をAIによって分類・再構築する取り組みを行っている。
JAMA Network Openから23日公開された研究論文によると、同チームが開発したAIシステムの正確性と有効性を確認するため、12名の医師を対象とした前向き研究が行われた。ここでは消化器科専門医らへの紹介患者における臨床記録を、1. 標準的なもの 2. AIによる最適化を受けたもの としてそれぞれ提供し、臨床医に対する22の質問によって各臨床記録からの情報検索時間や満足度などを調査・比較した。結果、標準的な臨床記録のレビューと比較して、AIシステムによる最適化を受けたものは18%の時間短縮を実現し、データ取得の精度にも差はなかった。さらに12名の医師のうち11名は、標準的なものよりもAIによって再構築されたものを好むことも明らかにしており、患者情報の抽出支援にAIが有効である可能性が示唆された。
著者らは「医療データは増え続けており、この事実は臨床医のストレス増大に重大な影響を与えている。AIシステムに対するユーザーの親しみやすさが増すとともに、システム自体がさらに強化されることで、大量の患者記録であっても医師による情報抽出がさらに改善していくことが期待される」と述べている。医療の生産性や質的向上に貢献するばかりでなく、「医師の負担軽減に直接的に寄与するAIシステムを構築し得ること」を示す好例と言えるだろう。
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