医療とAIのニュース医療におけるAI活用事例疾患診断へのAI活用事例救急部での臨床判断を支える「新しい機械学習トリアージツール」

救急部での臨床判断を支える「新しい機械学習トリアージツール」

救急部でのトリアージは、患者の生存可能性、医療資源の利用可能性、地域の慣習など、不文律を含む複雑な臨床判断に基づいている。リスク層別化にはスコアリングツールが有効であるが、現在利用できるものには限界がある。シンガポールの主要なメディカルスクールであるDuke-NUSの研究者らは、汎用の機械学習スコアリングフレームワークを用い、新たなリスク予測スコアを開発した。

JAMA Network Openからこのほど公開されたチームの研究論文によると、SERP(Score for Emergency Risk Prediction)と名付けられた本スコアリングツールは、2009年1月1日から2016年12月31日までに救急部を受診し、その後シンガポール国内の三次病院に入院した全ての患者データから構築された。変数には救急外来で入手可能なものを簡潔に選び、ツールの解釈可能性を高めた。結果、2日後の死亡予測でAUC 0.821、7日後で0.826、30日後で0.823と高い予測精度を示し、これは従来のツール(Patient Acuity Category Scale、Modified Early Warning Score、National Early Warning Score、Cardiac Arrest Risk Triage、Rapid Acute Physiology Score、Rapid Emergency Medicine Score)を上回っていた。

研究者らは「SERPは既存のトリアージスコアよりも優れた予測性能を持ちながら、救急部での実施の容易さと確認のしやすさを維持する。今後、SERPはあらゆる医療現場で広く適用され、また検証されていく可能性がある」としている。

関連記事:

  1. MayaMD – AIヘルスアシスタントが「臨床医を超える正確なトリアージ」
  2. Infermedica – 注目を集めるAIトリアージシステムとそのビジネスモデル
  3. 米大規模ヘルスケアプロバイダー AIトリアージツールを導入
  4. 救急外来で心房細動治療が見過ごされないためのAIアプリ
  5. 救急科AI – COVID-19の増悪を予測するマルチモーダルAIシステム
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事