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頭頸部がんの治療強度を下げるためのAI利用

米オハイオ州クリーブランドに所在するケース・ウェスタン・リザーブ大学の研究チームは、「放射線療法の治療強度を下げても、治療効果が十分に期待される患者」を特定する機械学習アルゴリズムの構築に取り組んでいる。

Journal of the National Cancer Instituteから公開されたチームの研究論文によると、研究者らは6つの病院群からデータを収集し、このAIアルゴリズムの構築と有効性の検証を行った。「ヒトパピローマウイルス(HPV)関連中咽頭扁平上皮癌」として知られる頭頸部がん患者438人から、組織サンプルのデジタル画像を取得し、「放射線治療における線量を大幅に低減しても治療効果の得られる患者」を識別するAIアルゴリズムを構築することに成功した。著者らは「HPVに起因するがん患者の多くは積極的な治療が有効であるが、今回の研究により、良好な治療成績を得るために必要以上に積極的な治療を受けている患者が相当数存在することが明らかになった」としている。

同大学のリリースによると、「組織スキャンから適切な治療強度を選択することは人の目には困難であり、本技術がなければこれらのがん患者はすべて、化学療法と放射線療法のフルコースで治療されることになる」と指摘する。どの頭頸部がん患者がデスケーリングの恩恵を受けるのかを明確化することは、絶対的な被ばく線量低減に加え、ドライマウスや嚥下機能障害、味覚変化などの放射線療法に伴う副作用を防ぎ得る点でも期待が大きい。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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