腎臓は健康寿命との関わりが強い臓器である。その病気を考える上で高精度なリスク評価分類は重要となる。急性期の診断と治療介入から、慢性期の機能維持と透析治療回避、そして予後の予測まで、従来法を上回る個人に適した評価法の発展には、AIが大きな可能性を秘めている。
学術誌Critical Care Medicine収載の研究は、電子カルテからの機械学習で急性腎障害のリスクを予測するアルゴリズムである。人口統計・バイタルサイン・血清クレアチニン値などを判定要素として、差し迫った急性腎障害を高精度に予測することができ、早期の治療介入を可能とするという。重症化で透析治療に至る慢性腎臓病は、腎臓の針生検標本の病理診断が基礎にある。学術誌Kidney International Reportsに発表された研究では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN) の利用で腎臓の生存期間を針生検標本の繊維化所見から予測するという。従来の病理医による繊維化の評価分類よりも腎生存率の正確な推定が可能であったと報告されている。
生活習慣と高齢化が密接に反映される腎臓病は、透析治療の多大な医療負担を回避する観点からも、今後の日本にとって積極的に取り組むべき領域である。かかりつけ医から腎臓専門医までを強力にサポートする体制づくりのためにも、AIが果たす役割は拡大するだろう。