AIは腎臓病と透析導入を予防できるか?

腎臓は健康寿命との関わりが強い臓器である。その病気を考える上で高精度なリスク評価分類は重要となる。急性期の診断と治療介入から、慢性期の機能維持と透析治療回避、そして予後の予測まで、従来法を上回る個人に適した評価法の発展には、AIが大きな可能性を秘めている。

学術誌Critical Care Medicine収載の研究は、電子カルテからの機械学習で急性腎障害のリスクを予測するアルゴリズムである。人口統計・バイタルサイン・血清クレアチニン値などを判定要素として、差し迫った急性腎障害を高精度に予測することができ、早期の治療介入を可能とするという。重症化で透析治療に至る慢性腎臓病は、腎臓の針生検標本の病理診断が基礎にある。学術誌Kidney International Reportsに発表された研究では、畳み込みニューラルネットワーク(CNN) の利用で腎臓の生存期間を針生検標本の繊維化所見から予測するという。従来の病理医による繊維化の評価分類よりも腎生存率の正確な推定が可能であったと報告されている。

生活習慣と高齢化が密接に反映される腎臓病は、透析治療の多大な医療負担を回避する観点からも、今後の日本にとって積極的に取り組むべき領域である。かかりつけ医から腎臓専門医までを強力にサポートする体制づくりのためにも、AIが果たす役割は拡大するだろう。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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