心疾患、特に冠動脈疾患のリスク因子は欧米を中心にエビデンスの構築が進んでおり、それらリスク因子が他人種においては十分な疾患の発症予測を行わないことがある。実際、インド人においてはLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)高値が必ずしも、欧米人のように高度な心疾患リスクとはならないことが知られている。
Microsoftが19日に公開した記事によると、インド最大の私設ヘルス企業Apollo Hospitalsと共同し、AIを利用した「インド人における心疾患リスク因子の探索」を行なっているという。インド全土40万人以上の患者データをもとに、Microsft Azureのクラウドサービスを利用し、機械学習手法による潜在的リスク因子と心疾患発症の関係を探っている。現在のところ、インド人に特異的な心疾患リスクとして21のリスク因子を同定しており、これを利用した冠動脈疾患の発症予測モデルは、従来のものに対して2倍程度の正確性を誇るとのこと。
医療分野におけるAIの急速な進展においては、とかく個別化医療実現の可能性に注目が集まる。これは個人ごとの予防・診断・治療における最適化を意味する一方、従来、著しくエビデンスが欠落していた特定集団における医学的知見の補完が可能であることも重要な要素であり、今回紹介した一例はこの際たるものと言えるだろう。