WHOによると低〜中所得国では医薬品の約10%が偽造されたものという。偽の抗マラリア薬・抗菌薬・ワクチンなどのせいで適切な治療が受けられず年間10万人が死亡し、300億ドルが経済的に損失している試算がある。高所得国にとっても他人事ではない。例として、2019年2月のWHOの警告では、高価な薬品のひとつである白血病治療薬ICLUSIG(日本販売名ポナチニブ)の偽造品が欧州内で出回っていることが報告された。
debexの記事では、それらの偽造医薬品と戦うAIやブロックチェーン技術が紹介されている。スタートアップRxAllは、低所得国のためにコストを下げたAIアルゴリズム搭載の分光光度計を開発した。スキャンしたその場で薬の真贋を判定するだけではなく、データ集計から偽造薬が流通した薬局を特定し、経路の追跡にも役立たせる。また、ロンドンを本拠とするFarmaTrustは、本物の薬が梱包されたあとにスキャンし、仮想空間上に『デジタルツイン(物理的な完全コピー)』として再現する。データはブロックチェーン技術で保護され、 流通業者や患者はシリアルデータから薬が本物であることをチェックできる。
RxAllの創設者Alonge氏は、自身もナイジェリアの病院で喘息治療薬Ventolinの偽造品による昏睡状態となり生命の危機に瀕したことがある。その経験が彼の戦う動機のひとつとなっているという。フェイクを生む技術が広がる一方で、フェイクと戦う革新的な取り組みも日々進化を続けている。