AI時代に求められるITリテラシー

機序の分からない薬を医師が処方できないように、学習データの質やアルゴリズム選択の妥当性を理解できなければ医療AIを適切に運用することは難しい。医療にAIが台頭する時代、医療者にも強力なIT知識が求められようとしている。一方、個人の医療情報の多くは既に電子化されており、これを取り扱う医療者に最低限の危機管理意識と周辺知識さえなければ、進展ははるか手前で大きく頓挫してしまう。

Press-Telegramが先週報じたところによると、米カリフォルニアの退役軍人病院に勤める医療スタッフたちが、社会保障番号を含む患者データを私用のEメールなどでやり取りしていたという。内部調査によると、安全性の低いデータ通信手段を利用していたことにより、133名の患者データが第三者に容易に盗み見られる状況にあった。事態は2013年から2017年まで継続していたとのこと。

この種のトラブルは、スタッフの危機管理意識の低さが問題の本質ではあるが、それと同時にデータの取り扱いに関する背景知識の欠如を伴うことが多い。医療AIが大規模な展開をみせるなか、まずは医療スタッフの最も根本的なITリテラシーに目を向けることが実は欠かせない。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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