オランダ・ユトレヒト大学などの研究チームは、若年成人における将来的な自殺企図の発生を高精度に予測するため、機械学習モデルを用いた研究に取り組んでいる。
Journal of Affective Disordersに今月収載されるチームの研究論文によると(電子版は公開済み)、スコットランドの18-34歳の男女3,508名からベースラインのデータを測定したという。1年間の追跡調査に成功したのは2,428名で、14%にあたる336名が期間中に希死念慮を報告し、実際に50人が自殺企図に至った。検討した複数の機械学習モデルはいずれもパフォーマンスとして近傍していたが、ランダムフォレストが希死念慮を最も良好に予測し(AUC 0.83, PPV 0.52, BA 0.74)、自殺企図については勾配ブースティングが最良となっていた(AUC 0.80, PPV 0.10, BA 0.69)。
自殺関連行動の予測精度は過去数十年において劇的な改善をみておらず、AIアプローチへの期待感は近年特に強まっている。その一方で、本研究においては自殺企図者数が多くないこと、取得データが心理的リスク要因に限られていたことなどを主因として、複雑な機械学習アルゴリズムが通常のロジスティック回帰による予測精度を上回ることは示せていない。今後、種々の健康関連情報に加え、雇用や教育といった社会経済的因子までを考慮した、大規模な縦断研究における予測モデルの確立と有効性の検証が求められている。