認知機能低下が病的に進行した状態、いわゆる認知症は患者本人にとっての多大な不利益のみならず、患者を取り巻く家族・社会にとっての負担も大きく、その対策は先進国を中心に喫緊の社会課題として取り扱われている。
一方で、AIをはじめとした先端技術は、根本治療のいまだ得られていないこの疾患に関するコントロールを大きく様変わりさせようとしている(過去記事:根本治療薬の探索へのAI活用例)。認知症の予測アルゴリズムは数多くの研究成果が示され、そのいくつかは臨床的有効性を示唆するものとなっている(過去記事 1, 2)。英ノースヨークシャー州ハロゲートに本拠を置くVida Healthcareは、認知症専門医療機関として知られる。古典的な疾患管理手法に加えて、テクノロジーによる先進的な取り組みでも近年注目を集める。認知症患者をアクティブに保つための手段として、ビデオ通話アプリを活用したトレーニングプログラムや、ビデオ・サウンドによる視覚聴覚刺激を伴う屋内型運動器具を取り入れる。また、認知症患者における新しい娯楽と豊かさを提供する目的に、VRも積極的に活用し始めた。
テクノロジーを患者の行動監視にのみ適用する時代は終わろうとしている。Vida Healthcareは、居住者とその家族・友人とのつながりを強化する新しいアプリを開発し、施設であっても日常生活を共有し、誰もが健康と幸福を享受できる日常を目指している。