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骨折特性と患者背景から術後の感染症リスクを推定する機械学習アルゴリズム

整形外科的手術後の創部感染は、抗生剤治療や再手術に伴う入院期間延長をきたし、時に患者予後にも大きな影響を与える。The Journal of Bone & Joint Surgeryに収載された新しい研究論文では、入院時の骨折特性や患者背景から「脛骨骨折患者の感染リスクを推定する機械学習アルゴリズム」を報告している。

先週オンライン公開された本研究論文によると、1,822名の脛骨骨折患者データからアルゴリズムを導いたという。解析対象群のうち9%にあたる170名は治療を必要とする感染症を発症し、62名は抗生剤治療単独、残りの108名は再手術を伴う抗生剤治療を受けた。ランダムフォレストの変数重要度に基づく変数選択では、感染症発症への予測変数としてGustilo-Anderson分類やTscherne分類、骨量減少、損傷メカニズム、多発外傷、骨折部位、年齢などが特定された。正則化ロジスティック回帰モデルのトレーニングによって、AUC 0.75程度の発症予測精度を得ている。

入院時評価項目から術後の感染症リスクを推定できる本手法では、治療選択の個別最適化のほか、必要となる医療リソースの事前予測と配分の適正化にも貢献し得るため、医療の質的向上と効率化の両面に資することが期待される。

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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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