心的外傷後ストレス障害(PTSD)を予防するためには、誘引となるイベント後の「初期フェーズ」で早期介入を行うことが重要となる。米コロンビア大学やニューヨーク大学などの共同研究チームは、外傷後48時間以内の臨床データからPTSD発症リスクを推定する機械学習モデルを構築した。
Neurobiology of Stressに収載されたチームの研究論文によると、2所の大学病院レベル外傷センターで治療を受けた417名の患者データから、この予測モデルを導いたという。外傷後48時間以内のバイタルサインや薬物治療状況、患者属性、外傷の程度などから、その後12ヶ月でのPTSD発症を予測するため、アンサンブル学習のひとつであるXGBoostを用いたモデル構築を行った。最良のモデルはAUC 0.89でPTSD発症を識別しており、長期のPTSDリスクが外傷後48時間以内の臨床ルーチンデータから高精度に予測できることが示唆された。
研究チームは、この研究成果がPTSD発症予防に向けたターゲット因子の明確化につながること、およびPTSDの複雑な病因解明への洞察を提供する点を強調している。精神科疾患領域へのAI活用は、データアプローチによるメンタルの定量評価を実現する可能性があり、近年大きな注目を集めている。