AIツールが患者の健康リテラシーを向上させる可能性

患者が自分自身の医療記録にアクセスする権利は保障されている。しかし、それによって自動的に「内容の理解や適切な健康上の意思決定」ができるようにはなるわけではない。その課題解決のため、医療記録へアクセスする患者の「健康に関するリテラシーを向上させる自然言語処理AIツール」が研究されている。

米ノートルダム大学のニュースリリースによると、同大の研究チームは電子カルテの理解度を確認するツール「ComprehENotes」を開発し、医療用語を患者向けに翻訳し理解を助けるツール「NoteAid」の有効性を検証した。マサチューセッツ州の地域病院から募集された試験参加者はComprehEnotesのテストを受ける際に、NoteAidでテキスト上にマウスカーソルを置くと医療用語の定義が表示されるという介入を受けた。その結果、介入なしの対照グループよりもNoteAid介入群ではComprehENotesテストでの理解度スコアが有意に高かった。研究成果はJournal of Medical Internet Research誌に掲載されている。

同研究は、教育レベルの低い患者を含む地域病院であってもNoteAidが有効であることを示唆する。自然言語処理ツールが患者の健康リテラシーを向上させる証拠を得て、研究チームのJohn Lalor氏は「患者の読解レベルを考慮してツール内の辞書を評価できれば、専門用語として辞書に載せるべきものと、珍しく理解できない用語であっても患者の理解度にとって重要ではないものを取捨選択できるようになる」と語っている。

関連記事:

  1. AI時代に求められるITリテラシー
  2. One Drop – 慢性疾患患者向けのAI健康管理プラットフォーム
  3. AIリテラシーが医療者に欠如?
TOKYO analytica
TOKYO analyticahttps://tokyoanalytica.com/
TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
RELATED ARTICLES

最新記事

注目の記事