心拍や呼吸数といったバイタルサインを「非接触で」測定する技術は、臨床現場での有用性が検討されてきた。皮膚が敏感で脆弱な乳幼児、特に新生児集中治療室(NICU)に収容されるような早産児にとって、皮膚接触のないセンサーで、不安定なバイタルサインを常時監視できることには価値がある。
南オーストラリア大学のニュースリリースでは、同大の研究者らによって開発された非接触型バイタルサインモニタリングシステムを紹介している。これは、コンピュータビジョン技術に基づき、デジタルカメラで新生児の顔を自動検出し、接触型の心電図計と同等の精度でバイタルサインを監視するもの。NICUに収容された新生児のビデオデータセットから構築された畳み込みニューラルネットワークは、心拍数と呼吸数について接触型の心電図モニター値と強い相関を示し、誤差が少ないことが示された。研究成果はJournal of Imaging誌に発表されている。
NICU内の新生児は、チューブ類など医療機器で顔や身体が見えにくく、新生児黄疸に対する光線治療のため明るい青色光の下にいるケースも多いなど、コンピュータが映像を認識しにくい環境にある。そういったなかでも、同システムは顔や肌を確実に検出することができた。同研究チームは昨年、COVID-19スクリーニングのため、成人バイタルサインの非接触測定システムを開発しており、米Draganfly社の製品に技術が採用されている。チームのひとりで新生児集中治療の専門家であるKim Gibson氏は「障害物が多く照度も変化するNICU環境下で、私たちのバイタルサイン検出モデルは期待以上の性能を発揮してくれた」と述べ、AIとコンピュータビジョンによる画期的な成果を強調した。
関連記事: