米ニューヨーク大学の研究チームは、大人と子どもにおける「他者の観察方法」について、明らかな差異があることをアイトラッキングと深層学習を用いた研究によって明らかにした。成果はこのほどScientific Reports誌から公開されている。
チームの研究論文によると、未就学児と成人のそれぞれ22名に「ハンマーでペグを打ち込む人の動画」を視聴させたという。動画内では効率的に道具を用いている様子のみではなく、非効率な使い方も併せて示すことで、視聴時の注視点の違いなどを検討した。アイトラッキングによる検証の結果、大人は「道具の握り方」の観察に最も多くの時間を割いていたのに対し、子どもは全体観察によって握り方への注意が乏しい事実が明らかにされた。また、視線に対する深層学習分析でも「大人は効率的な把持と非効率な把持を区別している」一方、子どもはこれらを区別しておらず、瞳孔径や神経活動のモニタリングでも同等の結果を示していたとのこと。
著者らは「大人は他者の行動効率を知覚できるのに対し、子どもはできない」点について、「行動知覚の運動共鳴理論から予測されるように、観察者自身の運動プログラムの活性化は、観察者の運動経験から構築されるため、運動共鳴によって成人にのみ差動反応が生じることを示唆している」とする。これらの事実は、子どもが複数ステップを必要とする処理が苦手である理由について、神経プロセスからの解明を補助する科学的エビデンスとして注目を集めている。
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