Sensyne Healthは英オックスフォードに所在する医療AIスタートアップで、シリアルアントレプレナーでありながら英議会議員も務めるPaul Drayson男爵が率いる異色の組織だ。英国民保健サービス(NHS)が保有する大規模データを活用すること、設立後わずか1年でのIPOを達成したことなど、これまで際立った成果を示し続けてきた。同社はこのほど、ヘルスケア・ライフサイエンス分野向けに、AIを活用したグローバルなデータ分析プラットフォーム「SENSIGHT」の提供を開始したことを明らかにした。
Sensyne Healthによるプレスリリースによると、このデータ分析プラットフォームは匿名化されたリアルワールドデータに産業規模でアクセスすることさえ可能にし、複数の治療分野にまたがる知見抽出を実現するというもの。専門知識を要さず容易に使用できるAIアルゴリズムなどの分析ツールを備えており、患者データおよび疾患領域の急速な拡大によって、2024年までに1億人の患者データを取り扱うことを予定している。ポイントとなるのは、SENSIGHTは「データそのものは提供しない」点で、Sensyne社が保有する多種多様なデータセットを迅速に照会し、「インテリジェントな分析とデータに基づく洞察」を提供する。本プラットフォームを利用可能となる登録者は、利益相反を含む事前審査が行われる。
また興味深いことに、研究者は当該プラットフォーム上で互いにコミュニケーションを取ることができ、仮想的な共同研究を行うことができる。これは、ヘルスケアおよびライフサイエンス領域の専門家をつなぐ新しい形としての「科学研究ネットワークの形成」を意味しており、これまで専門家を集めることが困難であった特定の研究分野や、少数患者において満たされていない医療ニーズのある領域など、マイナーであっても共通の関心を持つグローバルなコミュニティが形成されることが想定される。Sensyne Healthの新しい取り組みが、今まさに研究のあり方さえも変革しようとしている。
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