下肢の深部静脈血栓症(DVT: Deep Vein Thrombosis)では、血栓が肺塞栓症を引き起こすことで致命的となる。専門家による超音波検査での確定診断には相応の待機時間が必要となり、現実的には、あいまいな診断と不必要な抗凝固剤投与が行われている現状もある。非専門家によるDVT診断を補助するため、英オックスフォード大学を中心としたグループは「DVTを識別するAIアルゴリズム研究」を推進している。
オックスフォード大学からのニュースリリースによると、開発された「AutoDVT」と呼ばれるシステムは、超音波検査をAIで自動解釈し、ユーザーに大腿静脈の適切な位置をガイダンスした上で血栓の有無を識別・アラートする。従来の専門家によるスタンダードな超音波検査と比較しても十分な感度・特異度を達成しており、さらにはアルゴリズムを診断フローに組み込んだ際、検査1件当たり約150ドルの医療コスト削減につながると試算された。本研究の成果は Digital Medicine誌に掲載されている。
検査を必要とするDVT患者は、全世界で年間800万人程度と推算され、中・低所得国を中心にDVTに伴う健康影響拡大が懸念されている。研究チームは「非専門家によるDVT診断を迅速かつ正確に行うためにAutoDVTツールが活用されること」を期待している。
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