COVID-19を抑え込むために厳格なロックダウンが行われた際の、医療機関への受診行動に与える影響が各種ビッグデータから解析・総括されてきている。2020年に2回の厳格なロックダウンが行われたオーストラリア・メルボルンにおいて、医療サービスへの影響を調査した研究成果が発表されている。
Journal of Epidemiology in Community Health誌に掲載された、豪モナッシュ大学による研究成果によると、大学内に設置されているヘルスケアデータベース「Healthy Ageing Data Platform」から、メルボルンのFrankston-Mornington Peninsula地域の救急外来受診・急性期入院・亜急性期入院の分析を行っている。人口約28万人の同地域は多様な年齢層と社会経済的背景を有し、医療の大部分を「Peninsula Health」という単一のサービスを通じているため、医療における動態調査に関して理想的な環境にある。過去4年間の受診データをもとに、Seasonal and Trend decomposition using Loess(STL)という手法から「COVID-19が発生しなかった場合の2020年の受診状況」を予測し、実際の受診状況と比較分析した。その結果、ロックダウンが行われた感染の第1波・第2波ともに、予測患者数に対して実際の受診は大幅に下回っていた。特に80歳以上と18歳未満の患者で最も顕著な減少がみられていたという。また、緊急性の高いトリアージ「カテゴリ1」と緊急性のない「カテゴリ5」では予想範囲のレベルで受診数が推移していた。
これらの結果は、メルボルンの厳格なロックダウンにおいて、「ロックダウン以前に救急外来を頻繁に利用していた患者層が在宅健康管理にシフトしたこと」や、「市民は生命に関わる症状については支障なく受診ができたこと」が示唆されている、と研究チームは考察する。本研究は、2020年のロックダウンが医療サービスにどのような影響を与えたか、正確かつ包括的な調査として高水準のエビデンスを示す。地域ベースのビッグデータが応用される方向性を示した好例としても、今後の研究発展が期待される。
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