Exscientiaの躍進

2021年、数多の医療AIスタートアップの中で最もまばゆい輝きを放ったのは「英国のExscientiaである」ということに異論の余地はほぼ無いだろう。英オックスフォードに本拠を置き、創薬をAIで変革する同社は本年、多数のマイルストーンを達成し業界から大きな注目を集めた。

医薬品開発において研究者らを支援するAIプラットフォームを構築するExscientiaは、少なくとも既に3つの新薬を臨床試験に至らせた。2012年に設立された同社は、バイエル・サノフィといった大手製薬のほか、日本の大日本住友製薬、世界最大の非営利研究機関であるSRIインターナショナルなどとも提携する。本年4月、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2が主導したシリーズDラウンドでは、2億2500万ドルの資金調達を行った。また6月には、競合にあたるAllcyteを6100万ドルで買収しており、ウィーンの本拠を欧州の拠点として拡大することを目論む。

10月にはティッカーシンボル「EXAI」でニューヨークに上場し、3億470万ドルを調達したほか、私募により、ソフトバンク・ビジョン・ファンド2およびゲイツ財団に、追加で727万2727株の米国預託株式が売り渡され、その受取額は1億6000万ドルとなった。創業者でCEOのAndrew Hopkins氏は、現在1860万株を所有しているが、売却の意図がないことも明らかにしている。「開発した全ての治療薬を誰もが享受できる世界」を目指す同社は、AIによって製薬を革新し続けている。

  1. 英Exscientia – BMSとの12億ドルに及ぶAI創薬契約に署名
  2. 英Exscientia – シリーズCラウンドで6,000万ドルの資金を調達
  3. バイエル薬品とAI創薬Exscientiaが提携 – 新規薬剤開発の新潮流へ
  4. AIによる創薬初の臨床試験開始
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TOKYO analyticaはデータサイエンスと臨床医学に強力なバックグラウンドを有し、健康増進の追求を目的とした技術開発と科学的エビデンス構築を主導するソーシャルベンチャーです。 The Medical AI Timesにおける記事執筆は、循環器内科・心臓血管外科・救命救急科・小児科・泌尿器科などの現役医師およびライフサイエンス研究者らが中心となって行い、下記2名の医師が監修しています。 1. 岡本 将輝 信州大学医学部卒(MD)、東京大学大学院専門職学位課程修了(MPH)、東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(PhD)、英University College London(UCL)科学修士課程最優等修了(MSc with distinction)。UCL visiting researcher、日本学術振興会特別研究員、東京大学特任研究員を経て、現在は米ハーバード大学医学部講師、マサチューセッツ総合病院研究員、SBI大学院大学客員教授など。専門はメディカルデータサイエンス。 2. 杉野 智啓 防衛医科大学校卒(MD)。大学病院、米メリーランド州対テロ救助部隊を経て、現在は都内市中病院に勤務。専門は泌尿器科学、がん治療、バイオテロ傷病者の診断・治療、緩和ケアおよび訪問診療。泌尿器科専門医、日本体育協会認定スポーツドクター。
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