医師の半数がキャリアの中で燃え尽き症候群を経験したことがあるとの調査結果があり、その原因には仕事量・責務・ワークライフバランス・スケジュールなどが挙がる。「AIを用いたスケジュール作成で医師の燃え尽きを減らす」研究が米国麻酔科学会のイベント「ADVANCE 2022」で発表されている。
米国麻酔科学会のリリースによると、本研究は米ニューオーリンズに拠点を置くヘルスケアプロバイダー・Ochsner Healthによって行われた。同機関では2018年から、麻酔科医のスケジュール調整にAIシステムが導入されている。従来はExcelによるスケジュール調整がスタッフの手によって行われていたが、システムによって「多くの休暇が付与され、未消化の休暇が減り、スケジュールの柔軟性と予測可能性が高まった」という。また、システム導入から6ヶ月以内に麻酔科医らの「エンゲージメントスコア(engagement score)」の平均値が5点満点中で3.3点から4.2点に向上した。エンゲージメントスコアは、「従業員の所属組織に対する愛着や貢献の意志」を定量化した指標のひとつで、同スコアが高まると、職員と組織との関係が良好になり、患者ケアの向上、安全性の向上、コスト削減、職員満足度や職場定着率の向上につながることが明らかとなっている。
研究チームの調べでは、従来の手動スケジュール作成には月60〜75時間が費やされていたが、AIシステムで月14時間に短縮された。また、システムによってICU勤務のシフトが公平に配分されると同時に、刻々と変化するスタッフの責任状況が考慮され、不安感の大幅な軽減にもつながったという。COVID-19の影響下でもシステムは役に立ち、感染拡大の最中においても、医師のエンゲージメントスコアは安定して推移したとのこと。研究を主導した、Ochsner Healthの麻酔科レジデントであるDhruv Choudhry医師によると「わたしたち麻酔科医は平均して月1〜2回の午前休と、またおよそ同数の午後休を追加で取れるようになり、ワークライフバランスが向上した。以前のシステムではこのようなことは不可能だった」と語っている。
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